Innocent Eyes/Satomi Kawakami
「イノセント・アイズ/川上さとみ」
強靭で、しなやか。スケール感のある音色!
メロディーとハーモニーの美しい鮮烈さが川上さとみの世界!!
川上さとみ :piano 上村 信:bass 田鹿雅裕 :drums
本格的ジャズ・ピアニスト、川上さとみの第3作。
女性ピアニストとして現在日本ジャズ・シーンで、もっともビ・バップの香りを大切にしているアーティストでもある。
前2作の雰囲気、エレガントな味を踏襲しつつ、よりビ・バップ色を強めた
ストレート・アヘッドなピアノ・トリオ作品。
ライナーノーツより抜粋
川上さとみのデビュー作「ティアラ」をはじめて聴いた時、まず耳に残ったのは、
そのピアノの音の落ち着いた佇まいだった。
完全に鳴り切っているのだけれどちっともうるさくない、スケール感のある音。
ちょっとのことではびくともしない強さを持ちながら、それでいて硬直していないしたたかな音。
クラシックの徹底的な訓練を土台に、さまざまな場所と条件の下で実戦を積んできた人でなければ
こういう音は出せるものではない。
「これがデビュー作だということだが、この人はそれなりの年輪を重ねてきた人ではないか」
というその時の僕の想像は、いまだに確かめられないままだが、
たぶんそう大はずれではないはずだ。
そういう音で生み出される音楽がまた、その音の特質を見事に反映させた
深くて豊かなものであることも、僕を喜ばせた。
基本的にはロマンティックな行き方で、
時にはエモーションを赤裸々に発露することも厭わないけれど、
タイムと響きに余裕があり、なおかつフレーズの扱いが大振りなので、
音楽が表層的な美しさに流れたり、逆にヒステリックになることがけっしてない。
スタンダード・ナンバーの神通力が薄れてきた現代において、
優れたオリジナルを書く能力は、成功の成否を左右する重要な鍵と言ってもよく、
事実昨今のジャズ・ミュージシャンの作る曲は、
特にアイディアの斬新さや精緻で凝った構造という点で注目すべきものが多いわけだが、
そんな中にあってさえ、
しかし川上さとみのオリジナルは、一際鮮やかな光彩を放つ。
斬新さよりも、メロディーとハーモニーの美しさをめざしたであろう彼女の曲は、
一度聴いたら忘れられない鮮烈さで聴き手を魅了せずにはおかない。
(藤本史昭)