Sweetness/Satomi Kawakami

スイングジャーナル誌選定 【ゴールドディスク】

「スウィートネス/川上さとみ」

ゆらぐ想いを ただこころのままに・・・

更にしなやかに、更に凛として 第2作

川上さとみ :piano 上村 信:bass 原 大力 :drums 

 

 

ライナーノーツより抜粋

 

今日我々はこれこそ世界に通用する日本のジャズ、というものに出会った。

その確信をようやく得たのである。

それが川上さとみの登場によってかなえられたことに、同時代に生きる者として深い喜びを感じずにいられない。

凄い時代になったのだ。こういう時代が、ついに来たのである。

川上さとみが、なぜそれほどまでに評価されるのか。

それは一にかかって彼女の奏でるピアノの音色にある。

そしてさらにそれを駆使しドライブさせ、歌わせるジャズの息吹に、我々は驚嘆を禁じえないのだ。

その無垢で純粋なピアノ・サウンドは、これまでのピアノ・ジャズの概念を

根底から覆すものであり、それが全力で疾走することで生じるジャズパワーと

音楽的感興に震えずにいられない。

 

 

断っておくが、ここで川上さとみが弾いているのは決して特注のピアノではない。

製作側から示された、普通の楽器だ。

だがそれを、彼女は徹底的に調律させ、タッチやペダルを調整し、

これなら、という状態に引き上げて弾いている。

これがプロである。純粋で無垢な世界を求めることにやぶさかではない日本人、

日本のジャズファンは、まずこのことを評価すべきであろう。

そして、そこから生み出される極上のジャズ・ワールドにどっぷりひたり、

至福の時間を受け取っていただきたい。

そこにはこれまでとはまるで異なる、

川上さとみだけの世界が繰り広げられていることを知るはずである。

 

 

スコッチにはスコッチにしかない味とフレーバー、なにより大事なキックがある。

コツンとくる飲み口、とでも表現されるものだ。

コニャックも同様で、アルマニャックや他のブランデーとよばれるものとは、

はっきり一線を画した味わいがある。

そういうオリジナリティ、固有のテイスト、そういったものが川上さとみのジャズにはあり、

それは一度味わってしまうと容易には消し去れない強さと深みを持っている。

これがいうところの個性であるが、

これまでの日本のアーティストでここまで徹底的に個性を発揮したジャズの人間はいなかった。

 

 

毎日聴きたくなる、というのが最上のホメ言葉だとするなら、

これは毎日でも朝昼晩でも聴きたくなる傑作だ。

ずっと聴き続けていたい。

 

(馬場啓一)